Another Days

tomorrow's another day、some say …

フェルダー、パイ、アシュラ

【月曜は鷲をめぐる30曲】16・Bad Girls / Don Felder('83)

83年に出たドン・フェルダーの初ソロ「Airborne」はやはり歌やサウンド(テクノ風の曲もありました)よりもイーグリーなgのリフやフレーズに耳が行きます。ネイサン・イースト(b)、カルロス・ヴェガ(ds)参加のシングル”Bad Girls”は今聞くとそんなに悪くはないんですがあの当時はとにかく期待が大きく、求めてたものとフェルダーのやりたかったハードロック的なものに差があったのです。

https://www.youtube.com/watch?v=dMkMu7qaBRE

 

【名曲リレー2633】ready#3

■I’m Ready / Humble Pie(’70)

A&Mに移籍したハンブル・パイは、大音量のハードロック路線へと舵を取るのですが、第1弾となった「Humble Pie」ではまずウィリー・ディクソン曲をハードロック風にアレンジ。マリオットだけでなくフランプトンもvoを取りちょっとらしくないが気張ってハード風に決めます。次のライヴ盤にも入ってますが個人的にスタジオ・ヴァージョンの方が好き。フランプトンのgソロもたっぷり聞けます。ジャケットはアール・ヌーヴァー期の英画家のオーブリー・ビアズリーのイラスト。

https://www.youtube.com/watch?v=4fEWI2ZlD5o

 

ただいまのBGMはアシュラ・テンペル改めアシュラの「Blackouts」('78)なり。マニュエル・ゲッチング(g)の流暢なプレイが独特の浮遊感を持って、心地よさを示すのはドラッグが介在しなくてもOK。英Virginから出た前作「New Age On Earth」同様、レーベル・メイトのスティーヴ・ヒレッジにも通じる多幸感を感じさせるトーンです。とりわけ”Midnight On Mars”は、渋谷さんの放送で聞いて以来ずっと大好きな曲。

 

【先週の読書】

24039■小説 浅草案内 / 半村良(新潮文庫)
最近半村良のノン伝奇作品ばかり読んでますが、これはエッセイに近い小説で主人公が北海道から東京に戻って来て浅草に住みだした半村良。実名、虚名入り混じる浅草の日々を語った作品でなごみます、週末ちょうど「異人たちとの夏」の映画を見てたもんだから余計に。表紙挿絵は安西水丸です。(1988)
24040■悪人 / 吉田修一(文藝春秋
全集のコレクションIII「犯罪」から久々に「悪人」を読みました。もう20年近く前の作品で、三人称で書かれた犯罪小説。思えばミステリ的なクライム・ノヴェルがはっきりミステリのジャンルとして市民権を得たのもこの頃だった気がします。出てくる人たち皆どこか欠点があって、ボタンの掛け違いのように悲劇的な事件につながるという悲しい話。一番の悪人は誰だったでしょう?

 

トッド、ウィグワム、ザッパ

【オムニバスを聞く日曜】80・トッドは真実のスーパースター(ポニー・キャニオン:PCD01113-J'97)

日本でも熱心なファンが多いトッド・ラングレンの日本人アーティストによるトリビュート集。prodはパール兄弟サエキけんぞうで、珠もあれば石もあるというまさにカオス状態。同じ曲が違う人のヴァージョンで複数あるのはちょっとなあ。ジャケットは「A Wizzard A True Star」の稚拙なパロディみたいでイマイチですが。

 

当時熱心に追いかけてたかの香織鈴木智文とのコラボ”Does Anybody Love You”はオリジナルを凌駕する出来だと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=UbhcpnxUvQE

個人的には宴会芸みたいな、王様のやってることをあまり認めてないんですが、超有名アーティストばかりを取り上げるのではなくトッド・クラスに挑戦するのならまあいいかも。”Hello It's Me”を”前略、僕です”とカヴァー。

https://www.youtube.com/watch?v=CfwANC7aJlY

パール兄弟窪田晴男と当時人気絶大だった女性シンガーの野田幹子のコラボ、”Love Is The Answer”はしっとりと聞かせます。

https://www.youtube.com/watch?v=mAX_2PA8i84

97年にディップ・イン・ザ・プールが聞けるとは思いませんでした。しかもインド風に始まる”Can We Still Be The Friends”です。

https://www.youtube.com/watch?v=TwWoMkRvfIE

 

 

 

 

 

【名曲リレー2632】ready#2

■Freddy Are You Ready / Wigwam(’75)

フィンランドを代表するバンド、ウィグワムが世界デビューとなった75年のVirgin盤「Nuclear Nightclub」に入った“Freddy You Are Ready“は、プログレというよりもモダンポップな味わいがあります。イントロのシンセの感じは懐かしさいっぱい。日本盤の邦題は「夜の原子核倶楽部」でした、なんだそれ。

https://www.youtube.com/watch?v=XxsYq1E4wfI

 

ただいまのBGMはフランク・ザッパ&マザーズの「Over-nite Sensation」('73)なり。よくは知らないながら、70'sのザッパの充実ぶりはすごい。正規出てるのだけで数えたら19枚あった。「興奮の一夜」をちゃんと聞くのは実は初めてですが、”I'm The Slime”はMidnight Specialのライヴ動画を見たことはあります。しかしカオスという感じの内容です。

ウィングス、ペチュラ、ヤードバーズ

【土曜はポールのウィングス時代30曲】11・Give Ireland Back To Irish

72年1月20日北アイルランドでの<血の日曜日事件>(デモ中のアイルランドの市民が英国軍によって銃撃され死亡した事件)に反応して曲を書き1か月後にリリースされた(発売前にBBCから放送禁止)ウィングスのデビューシングル。強烈なスライドgで始まりながらシンプルな歌詞がジョン・レノンによってまたも攻撃されたりしましたが、いち早いリリースはさすが。マカロックが北アイルランド出身ということもポールの行動を押したのでしょう。B面はインストで同タイトルですがarrが変えられていて別曲の様。ポールが吹くペニー・ホイッスルも聞けます。全英16位/全米21位まで上がるヒットとなりました。

https://www.youtube.com/watch?v=r0zGVVcsbPg

ロンドンのICAでのリハ(ファースト・リハーサル)での模様も手軽に見れるのは嬉しい。やたら気張ってシャウトするポールが初々しい。

https://www.youtube.com/watch?v=JQAPZ4KBYyo

レゲエのシングルなどでB面に入ったインストをVersionと書かれるのを真似た(ブリンズレー・シュワーツにもありました)”Give Ireland Back To Irish(Version)"。

https://www.youtube.com/watch?v=G53484SqsQc

 

【名曲リレー2631】get#3

■People Get Ready / Petula Clark(’70)

ダスティ・スプリングフィールドの「Dusty In Memphis」が先鞭をつけたのか、60’s末女性シンガーがわざわざ米南部まで出向いて録音するということが流行りました。女優としても有名な英国の女性シンガー、ペチュラ・クラークの場合、ダスティやルル同様、海を渡りその名もずばり「Memphis」というアルバムをチップス・モーマンのアメリカン・サウンド・スタジオ録音で完成させています。ペチュラの場合ソウルフルな展開にはならずキュートな印象になります。原盤はPyeでアメリカではWarner Brosからリリース。緑が美しいジャケです。カーティス・メイフィールド作の”People Get Ready“は後にジェフ・ベック&ロッドも取り上げた有名曲ですね。

https://www.youtube.com/watch?v=sfJZozlTq6o

 

ただいまのBGMはヤードバーズの「Yardbirds Featuring Eric Clapton」(’75)なり。今ではすべての音源が聞けますが、70's当時は怪しげなBYG音源が東宝レコードから出てたものしかまともに聞けなかった時期があったりと、三大ギタリストを輩出したというイメージばかり過大評価された事もありましたが、基本的にR&Bっぽいビートバンド。デビュー盤「Five Live」はクラプトンをフィーチャーしたライヴでこのジャケの写真をイラスト化した画像のアルバムは英Charlyから出たものでしょう(日本盤は80年にRVCから出てます。僕が完全版「Five Live」を聞いたのはもうちょっとあとで、Charly音源をつ使ったキングからの再発でした)。「Five Live」からのライヴ数曲とその後の「For Your Love」に入ったクラプトンがらみの曲を合わせた編集もの。”I'm A Man”はボ・ディドリー曲でキース・レルフの白いハーモニカをたっぷりとフィーチャー。

 

 

チューダー、Jボーイ、ウォーリー

【金曜の女たち】アン・ステュアート(Ann Steuart)

プログレ・フォーク・シーンの3美神は、クローダー・シモンズ(メロウ・キャンドル)、バーバラ・ガスキン(スパイロジャイラ)、アン・ステュアート(チューダー・ロッジ)とかつては相場は決まってた様ですが(最近はどうなんだろう?)、先の2人と比べるとアン嬢はモダン・フォーク的な歌い方がアマチュアぽくて良いです(PP&Mのような展開になることも)。その3人の中では、アン嬢(実はアメリカ人なんですが)に一番惹かれます。ジェイドのマリアンヌ・シーガル、デイライトのクリッシー・クエイルと並んで僕にとっての裏3美神であります。多面変形ジャケのチューダー・ロッジの71年作は、Vertigoと言う事もあって人気盤です。軽やかな歌声とfluteが印象的。72年にアンが辞めてグループは解散状態になりますが、97年にジョン・スタナードと新voのリン・ホワイトランドのデュオで復活しています。98年にはアン時代のレア音源集「It All Comes Back」も出て一部で話題になりました。その中でキャロル・キング作(「Music」に収録)のカーペンターズ・ナンバーを歌う”It's Going To Take Some Time"("小さな愛の願い")が何とも素敵。

https://www.youtube.com/watch?v=vkDxy61lz8k

 

【名曲リレー2630】get#2

■I Can Get By  / Jay Boy Adams(‘78)

JDサウザーアンドリュー・ゴールドを2で割ったような風貌、とはこれを紹介してくれた方の弁ですが、言いえて妙。音はもうちょっとソフトな感じ。僕は全く知りませんでしたがAtlanticから77年にデビューし、この曲はセカンド「Fork In The Road」('78)からでジャクソン・ブラウンがコーラスで参加しています。

https://www.youtube.com/watch?v=HTFIOGkzR0w

 

ただいまのBGMはウォーリーの「Wally」('74)なり。リック・ウェイクマンBBCのボブ・ハリスのprodでデビューしたバンドですが、ウェイクマンがらみでプログレの棚にありそうではありますが、violinやsteel-gも入ってどっちかというとアメリカ的なカラッとしたムードもあります。”Sunday Walking Lady”は、CS&N的なフォーク・ロックでハーモニーも素敵。

サーダグ、バタフィールド、ヴァニラ

【木曜はオルガンいろいろ】オーギー・メイヤーのこと

また全然タイプが違うのですが、テキサス出身のダグ・ザーム率いるサー・ダグラス・クインテットにはオーギー・メイヤーというチープなトーンのオルガン弾きがおりました。ブリティッシュ・ビートっぽいコンボオルガンの音に色彩豊かな感じが加わった”Mendocino”('69)はエキゾティックな味わいがあります。

https://www.youtube.com/watch?v=Hy3V2BGQKAk

【名曲リレー2629】woman#3

■Get Out Of My Life,Woman / Butterfield Blues Band(‘68)

元々はアラン・トゥーサン作でリー・ドーシーが歌ったR&Bをちょっとハードに味付けしたバタフィールド・ブルーズ・バンドの“Get Out Of My Life,Woman”は、マーク・ナフタリンのpianoを入れ、バタフィールドは吹かずに歌に専念。ちょっとスペンサー・デイヴィス・グループの”Think It’s Gonna Work Out Fine”に通じる感じあります。なんでも日本のゴールデン・カップスもやってた、と「East West」のライナーに書いてあった気がします。

https://www.youtube.com/watch?v=NosKY02gyaY

 

ただいまのBGMはヴァニラ・ファッジの「You Keep Me Hangin’On」('16)なり。なぜかamazonMにあるファーストにはこの代表曲”You Keep Me Hangin’ On”は未収録。ダイアナ・ロス&スプリームスのヒット曲を67年というあの時代らしく徹底的に大仰にアレンジした(ほかにも”Ticket To Ride”や”Eleanor Rigby”とかも)いわゆるアートロックの代表選手として、1期パープルにも影響を与えた有名バンドです。リズム隊が後にジェフ・ベックと組むティム・ボガートとカーマイン・アピス。後にロッド・スチュワートがアピスを迎えたバンドでこの曲をカヴァーしたときも痺れました。


あんぜん、メイスン、UFO

【水曜は和もの70's】18・あんぜんバンド

ウラワロックセンターというのは「70's~80'sの埼玉県の地元ロックシーンを支えた企画プロデュース集団」(ウィキより)とのこと。てっきりライヴハウスかと思ってた。ここの中心バンドがあんぜんバンドで、徳間バーボンから2枚のLPを出していました。”13階の女”は、デビュー作「アルバムA」に入ったナンバーでメロディアスなやつですが歌詞が今では放送できない内容でしょうね。カヴァーしたすかんちもライヴDVDからカットされたと言います。くり万太郎が高橋良一と名乗っていたころの「オールナイトニッポン」でかかってカセットに入れてた事を思い出しました。ところでリーダーの長沢ヒロっておニャン子の”おっとCHIKAN!”を書いた人と同じだったとはまさかでした。

ただこの曲は突出してメロディアスで、バンドの本質はもっとハードですが、ドゥービーっぽい感じもあります。

https://www.youtube.com/watch?v=lS3ZBBhBgic

 

【名曲リレー2628】woman#2

■Every Woman / Dave Mason(‘73)

「It’s Like You Never Left」を「忘れえぬ人」という邦題にしたのはなんとなくピンときます。デイヴ・メイスンの“Every Woman”はアコースティック・セットで歌われるナンバーで、そっちに入ったスタジオ・ヴァージョンよりもライヴ・ヴァージョンが映えます。動画はジム・クリューガーとのgの弾き語りになります。しかし休日のゴルフシャツというような格好だなあ。

https://www.youtube.com/watch?v=cV0-YANr_7k

 

ただいまのBGMはUFOの「Obsessions」('78)なり。前作「Lights Out」同様アメリカのマーケットを意識したキャッチーなハードロック路線を進めています。しかし叙情的なg(マイケル・シェンカー)とvo(フィル・モグ)のバランスは見事です。ヒプノシスによる不気味なジャケットも印象的でした。やはり”Only You Can Rock Me”が一番耳に残りますね。

ヤードバーズ、ヴェガ、高中

【火曜はカヴァー曲のカ~ディラン編】7・Mostly You'll Go Your Way And I'll Go Mine / The Yardbirds('68)

ジミー・ペイジをフィーチャーした4人組時代の末期ヤードバーズがライヴでよくやってた”我が道を行く”。個人的にはディラン本人の「Before The Flood」のライヴが一番好きですが。

https://www.youtube.com/watch?v=clW6dt0LIpY

 

【名曲リレー2627】new york#3

■New York Is A Woman / Suzanne Vega(’07)

デビュー当時しか聞いたことないスザンヌ・ヴェガの07年の「Beauty & Crime」からの“New York Is A Woman”は驚くほど声が変わってなくて新鮮です。古巣のA&Mを離れBlue Noteからのリリースでデビュー当時のフォーキーなイメージとはずいぶん違いますが心地よい声にうっとり。久しぶりにいろいろ聞いてみたくなりました。

https://www.youtube.com/watch?v=CpDb5qi3MwA

 

 

 

ただいまのBGMは高中正義の「Seychelles」('76)なり。サディスティックスのファーストと同時期に出た高中のファーストソロ。リゾート志向はユーミンよりも早かったのでした。76年にはクロスオーヴァーフュージョンという言葉はまだなかったと思いますが、ジェフ・ベックの一連のファンキー路線にも呼応した内容で、ティン・パン・アレイから林立夫(ds)が参加し、そのお礼にティン・パンの”チョッパーズ・ブギ”に高中は参加したのかな?

ティモシー、テレフォン、カーリー

【月曜は鷲をめぐる30曲】15・Playin' It Cool / Timothy B Schmidt('84)

MTV時代の84年に出たティモシー・シュミットの初ソロ「Playin’ It Cool」は、当時のチャートを意識したポップロックでカリフォルニアらしい能天気な明るさがありました。タイトル曲”Playin' It Cool”ではジョッシュ・レオ(g)、ヴィンス・メラムド(kb)というグレン・フライの初来日のメンバーに加えJ.D.サウザーも共作者としてクレジットされています。こういうキャッチーな曲があと2曲くらいあればこのアルバムの印象も変わったのに。PVは学園もの風。

https://www.youtube.com/watch?v=g-rngzNR4Z0

 

【名曲リレー2626】new york#2

■New York Avec Toi / Telephone(‘84)

テレフォンはNew Wave的なフレンチロックで77年にデビュー。常に国内ではアルバムはベストセラーとなった人気バンドだったようです。Virginと契約し84年に出た「Un Autre Monde」はグリン・ジョンズがprodしジョン・エントウィッスルがホーンで参加した曲もあるのだとか。軽快な“New York Avec Toi”はジャケット同様小粋な感じです。

https://www.youtube.com/watch?v=aWROzt7kudk

 

ただいまのBGMはカーリー・サイモンの「Anticipation」('71)なり。僕は「No Secrets」の良さがわからない人なんでこの時期のカーリーならまずこっち。ヤードバーズを辞めたポール・サミュエル・スミスのprodによるロンドン録音。ドタバタいうdsはアンディ・ニューマークなんだ。タイトル曲はベスト・トラックです。

 

【先週の読書】

24035■「あまちゃん」はなぜ面白かったか? / 小林信彦文藝春秋

24036■女優で観るか監督で追うか / 小林信彦(文藝春秋)

週刊文春」に連載されてた「本音を申せば」の2013,14年分。急に未読だったこと思い出しましたけど、もう昔のように小林信彦の書くことに一喜一憂はしません(^^)そういえば去年再放送を録画した「あまちゃん」後半まだずっと未見で手付かずでした。

24037新幹線大爆破 / ジェゼフ・ランス&加藤阿礼論創社

映画「スピード」に影響を与えた東映の「新幹線大爆破」は地味な映画でしたがヨーロッパでは短縮版がヒット。それを逆輸入の形でノヴェライズしたのが本書です。共作者の日本人は、映画の原案のプロデューサーの変名。なんとも松本清張的な話でした。
24038■夜明けの花園 / 恩田陸講談社
水野理瀬ものの短編を集めたもので、6篇中3篇が別のアンソロジーで紹介されてます。恩田さんの初期の傑作「三月は深き紅の淵に」('97)の第4章「回転木馬」の中に初めて登場した「水野理瀬」。この部分はこういう小説を書いているというあくまでも予告編で、これが拡大されたのが、第1作「麦の海に沈む果実」('00)。湿原の中にあるワケアリの生徒たちが集めらえた全寮制の小中高一貫の学園をめぐるミステリアスな話で、この本に入った5篇は、この学園のファミリーと呼ばれる仲間を主人公にしたスピン・オフ的な性格が強いです。熱心なファンが多い理瀬シリーズのファンサービス的な感じ。
 学園を去った理瀬が次に登場する「黄昏の百合の骨」('04)はゴシック風味のミステリ。そしてその17年後に出た第3作「薔薇のなかの蛇」('21)は、大人になって美術関係の仕事をしている理瀬がイギリスのエイルズベリーあたりの古い館に招かれ猟奇殺人に遭遇する話。ここにはオネエ言葉のウィルス・ハンター、神原恵弥シリーズのアリス・レミントンも登場し、そのアリスと理瀬の出会いを描いたのが本作の最後に入った”絵のない絵本”です。
どの作品も「麦の海」を読んでないと理解しにくい部分あるのでやはりそっちを読んだうえで本作を読むのがいいでしょう。(2024)

 

バドフィンガ、パーカー、ローデン

【オムニバスを聞く日曜】79・Come And Get It~A Tribute To Badfinger(Copper:CRP2181-US'96)
パワーポップのブームに乗って、Apple関係のマニア以外の所で再評価されたバドフィンガーの96年に出たトリビュート盤です。アル・クーパーイートン兄弟、エイドリアン・ブリュー、ドゥワイト・トゥイリーらその時代に活動した同期のような人たちからエイミー・マン、プリムソウルズら80's組、そしてもっと新しいバンドまで幅広い。ただ好きな曲だからストレートにカヴァーというものが少なくなくて密度が薄い感じあります。日本盤はパイオニアLDCからリリース。
 
ドゥワイト・トゥイリーは"I Can't Take It"をカヴァー。オリジナル以上の重さがあります。DTB解散後80'sにソロで成功したトゥイリーの久々の音源だった気がします。

https://www.youtube.com/watch?v=vdCxQaODHGo

 

まあこの曲はだれがやってもかっこいいのでしょうが”No Matter What”をナックのヴァージョンで。

https://www.youtube.com/watch?v=QUocHabSrN4

 

【名曲リレー2625】shuffle#3

■New York Shuffle / Graham Parker &The Rumour(’77)

ニック・ロウがprodしたグラハム・パーカー&ザ・ルーモアの「Stick To Me」('77)に入った軽快なナンバー。僕の中でGPという人は、タイミングを逃したというか、なぜかずっとスルーされてた印象があります。高校時代友人が騒いでた頃あまりピンとこなかったので、そのままこの周辺を聞くようになってもなぜか忘れていたのです。今あまりのカッコよさにそれを恥じるのです。

https://www.youtube.com/watch?v=u1fUJqsf-w4

 

ただいまのBGMはジェス・ローデンの「Jess Roden」('74)なり。ブロンコからバッツ・バンドに加わった時期でファーストソロはそのあとだと思いますが定かではない。ニュー・オーリンズ録音とロンドン録音が混在するものでソウルフルな歌声が楽しめます。大好きな”What The Hell”はロンドン録音でラビットが弾くエレピが心地いいです。

 

 

ウィングス、スティルス、クレア

【土曜はポールのウィングス時代30曲】10・C Moon

リンダのレゲエ好きは有名だったようでエコー処理の”C Moon”はそれ風のarrが楽しい。マカロックがds、ポールがp、レインがb、サイウェルがxylophoneとcornet、リンダがコーラスという変則ラインアップが楽しい。”Hi Hi Hi"のB面でA面が放送禁止だったからこっちがよくかかったのかもしれません。

https://www.youtube.com/watch?v=UPuJUUK-RLs

 

【名曲リレー2624】shuffle#2

■Shuffle Just As Bad / Stephen Stills(’75)

 スティーヴン・スティルスの“Shuffle Just As Bad”は75年の「Stills」に収録されました。例によって盛り上がる前に終わってしまう曲ですが、ジャム部分の後半がフェードアウトされてなければもっとよかったのかも。

https://www.youtube.com/watch?v=MC8D7onRSTk

 

ただいまのBGMはQlairの「アイドル・ミラクルバイブル・シリーズ」('16)なり。クレアは、フジテレビがおニャン子クラブの後を狙った乙女塾出身の3人組。アイドル冬の時代に可憐に咲き散っていきました。鈴木祥子が自分のために書いた”パジャマでドライブ”はちょっとかわいすぎるのでクレアに提供されたもの。基地のアンテナとかFENのチャンネルとか懐かしいワードいっぱいです。グループ名がギルバート・オサリヴァンのあの曲から来てる話は有名。

 

 

ジェニファー、キングビーズ、

【金曜の女たち(再)】ジェニファー・ウォーンズ

47年米ワシントン州シアトル出身。今年で77歳なので、リンダ・ロンスタット(46年)とほぼ同世代。ブレイクしたのが遅かった(77年のAristaからのカムバック盤)のですが、キャリアは古く、デビューは68年になります。

ロック・ミュージカル「Hair」のキャストで歌ってたり、レーナード・コーエンのツアーに同行したり、ジョン・ケイルのprodで「Jennifer」という傑作をRepriseから出したり(あまりの偏愛ぶりに架空ライナーノーツをブログに書いたものです)、AristaからMOR的な作品でカムバックしたり、クリス・トンプソンジョー・コッカー、ビル・メドレーなどのデュエット・パートナーとして映画の主題歌を次々にヒットさせたり、と地味ながら多彩な活動。ただ自身のアルバムは相当な寡作ぶりで、92年の「The Hunter」01年の「The Well」18年の「Another Time Another Place」と10年に1枚しかアルバムは出してません。年齢的に2020'sにあと1枚出すのは難しいのか!

最新作「Another~」にはウォーレン・ヘイズとデレク・トラックスというオールマンズゆかりのメンバーの作になる”Back Where I Started”(グレッグ・リーズのdobroが心地いい)が入っていて、歌声も若いころと変わってない!

https://www.youtube.com/watch?v=-ze16Z-TGAA

 

【名曲リレー2623】lost in#3

■Lost In The Shuffle / King Bees(‘66)

若きダニー・コーチマーが66年に組んでいたキング・ビーズは、本人の弁に寄ればオーティス・レディングやブッカー&MGズにあこがれて始めたR&Bバンドとのこと。後にフライング・マシーンやジョー・ママでも一緒のジョエル・オブライエン(ds)も参加。66年のラストシングルのB面がこの“Lost In The Shuffle”(RCA)です。抑制された歌声がいい。

https://www.youtube.com/watch?v=c1D5SZIH6vE

アートウッズ、クラッシュ、岡崎

【木曜はオルガンいろいろ】アートウッズのこと

アシュトンを出したので盟友ジョン・ロードを出さないわけにはいきませんね。ハードロック・オルガンの第一人者のロードのルーツの一つはジミー・スミスのオルガン・ジャズで最初の大きなバンドアートウッズでも、スミスに影響を受けたオルガンを披露。アートウッズは基本R&Bバンドなのですがシングルはポップにまとまったものも多かったです。”Oh My Love”では、アート(弟はロン・ウッド)のAlright Jonのコールの後短いソロがあります。

https://www.youtube.com/watch?v=0OfTNn2jE7Y

 

 

【名曲リレー2622】lost in#2

■Lost In The Supermarket /The Clash(‘79)

クラッシュの大作「London Calling」はそれまでのパンク的なイメージを打ち破った2枚組でした。エルヴィスのファーストからヒントを得たジャケットの文字の色使い、ストレートなパンク曲もありましたが、意外なほどポップなメロディー曲もありました。“Lost In The Supermarket”は後者の代表ですね。

https://www.youtube.com/watch?v=ab85gD6wdUM

 

ただいまのBGMは岡崎友紀の「ドゥ・ユー・リメンバー・ミー」('80)なり。加藤和彦がprodしたポップス・マインド溢れる1枚。こういうのが80年に出たということがバック・トゥ・60'sなムードを加速させることになりました。タイトル曲はスペクター調の作りこんだ疑似60'sポップ。思えば岡崎友紀という人は元祖アイドル女優だったなあ。