1975年といえばディスコ音楽がじわじわ人気を博したり、いわゆるsswの音楽にポップ・ソウル的なバッキングが付いたり(熱心なファンは「商業化」と呼びました)し始めた時期。西海岸的な乾いた明るいメロディアスな音作りが、全米的にいや世界的に広がった(小難しいファンは「必然性がない」と言いました)時期です。
前年では若手の注目株筆頭のイーグルスは「One Of These Nights」の大ヒットで全米的な人気を博しました。カントリー的なメロディーの”Take It To The Limit”はランディ・マイズナーの出世作ですが、ここにもフィリーソウル的なストリングスがかぶせられ、結果として見事なカントリー・ソウル・ロック(こんな言葉はありません)となっていました。ナチュラルなカントリーロック志向のバーニー・レドンの居場所はなくどんどん追い詰められたあげく脱退します。それでもバーニーはこのアルバムで”Journey Of The Sorcerer”と”I Wish You Peace”というそれぞれ毛色の違う2曲を提供して(おまけに各サイドのラストに配置)、どちらもこのアルバムでは異色の作品となっています。そして最重要なのはやはりタイトル曲で、ファルセットやソウルっぽい都会的なリズム感覚はこれまでにないものでした。切れ味鋭いランディーのハーモニーとbass(とりわけこのイントロの素晴らしさはバッサリ切られたシングル・ヴァージョンでは味わえません)が印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=8vpgoNDi71Q